民法改正で自筆証書遺言はどう変わる?
現在改正案が議論されている民法ですが、この議論の中に自筆証書遺言に関する事項も含まれています。
主な改正点は次の3点です。
1、自筆証書遺言の方式の緩和
2、法務局による遺言書の保管制度の創設
3、検認手続きが不要になる
それぞれどのような内容なのか、現時点の情報に基づいて解説してみます。
自筆証書遺言の方式緩和
現在の自筆証書遺言では、全文を自筆で書かなければならないことになっていますが、これは、高齢者の方などには大きな負担になっているのも事実です。
費用をかけずに気軽に書けるのが自筆証書遺言のメリットの一つですが、「手が震えてしまって、すべて手書きで書くのは無理だ」と、あきらめてしまう方も実際にいらっしゃいます。
このようなことから、今回の法改正では、
遺言書の中身のうち、「遺贈等の財産の特定に関する事項については、自書しなくともよい」とする案が出ています。
これはどういうことかというと、財産の記載部分については、自書せずに、「パソコン等による作成や、遺言者以外の人に書いてもらってもよい」ということです。
ただし、パソコンや代筆などで作成する場合には、作成したその全部のページに署名及び押印が必要になることとされています。
法務局による遺言書の保管制度の創設
公正証書遺言書は、遺言者が120歳になるまで、公証役場でその原本を保管してくれますが、自筆証書遺言書にはそのような仕組みはありません。
自筆証書遺言書は、その多くは「遺言者自身」や「特定の相続人」が保管することが多く、遺言書を書いた後に紛失したり、相続人によって隠されたり、変造されたりすることも考えられます。
そこで、法改正後は、「法務局」(登記所)が自筆証書遺言書を保管することが検討されています。
遺言者(遺言を書いた人)が亡くなった後であれば、相続人(受遺者または遺言執行者を含む)が「遺言書の謄本」を請求したり、遺言書の「閲覧」などができる事になると考えられます。
自筆で遺言書を書いたこと、法務局に遺言書が残されている(登録されている)ことを相続人に伝えておくことで、その存在を明確にすることができて、公的機関をとおして内容を確認できるので、客観性や改ざん・変造に対する安全性はかなり向上するでしょう。
検認手続きが不要になる
自筆証書遺言書と秘密証書遺言書は、遺言の内容を実現させるために、家庭裁判所による「検認」手続きを必要としています。
この検認手続きが必要となる点も自筆証書遺言書の作成をためらわせる要因になっていましたが、法改正後は、家庭裁判所の検認を要しないものとすることも検討されています。
また、家庭裁判所による遺言書の検認の際に、すべての相続人に検認期日とと遺言書が存在することを通知する手続きがありますが、今回の法改正にあたっても、法務局が保管している自筆証書遺言書について、遺言書保管の事実を通知することが考えられているようです。
まとめ
今回の民法改正によって、自筆証書遺書の利便性は格段に向上することが考えられます。
ただし、ご紹介した内容は、まだ確定したものではないので、現時点では厳格な方式をきちんと守って作成してください。
今回は、民法改正で自筆証書遺言書はどう変わるか? について書かせていただきましたが、いかがでしたか?
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