特定の子供に多く残したい! 「遺留分」で揉めないための生前対策

 

【仙台の相続相談】

今日は朝から机に並んだ分厚いファイルを確認しています。

家族の形がそれぞれ違うように、財産の残し方にも正解は一つではありません。

「あの子には苦労をかけたから多く残したい」という切実な声に触れるたび、制度の理解がいかに大切かを痛感します。

今回は、そんな時に避けては通れない遺留分のお話です。

社労士・行政書士監修|2025年4月時点の法令に基づく

「長男には会社を継いでほしいから、財産を多めに残したい」

「介護を頑張ってくれた娘に、多く遺してあげたい」

そんな想いをお持ちの方は、仙台でも多くいらっしゃいます。

しかし——。

「特定の子供に多く残す」遺言を作っても、他の兄弟から「遺留分を侵害している!」と請求が入り、相続後に揉め事へ発展するケースが見受けられます。

この記事では、遺留分の仕組みをできるだけ正確にお伝えしたうえで、兄弟間の争いを防ぐための生前対策を、社労士・行政書士の視点からわかりやすくご紹介します。

✅ この記事でわかること(まとめ)

  • ① 遺留分は法律上ゼロにはできないものの、「揉めにくい設計」を目指すことは十分に可能です
  • ② 遺留分の割合・計算方法を具体的な数字でご確認いただけます
  • ③ よくある誤解4つを知ることで、的外れな対策を避けやすくなります
  • ④ 仙台の実例3ケースから、ご自身の状況に近いヒントを得られます
  • ⑤ 公正証書遺言・生命保険・生前贈与など6つの対策手段を比較してご紹介します

結論:遺留分は「ゼロにしにくい」が、対策次第で揉め事は防ぎやすくなる

まず、大切な結論からお伝えします。

遺留分とは、民法が一定の相続人(子・配偶者・直系尊属)に最低限保証している相続の取り分です(民法第1042条)。

どれだけ「長男にすべて渡す」という遺言を書いても、他の相続人にはこの権利が認められています。法律上、完全に奪うことはできないのが原則です。

しかし——正しい生前対策を講じることで、揉め事のリスクを大幅に下げることは十分に可能と考えられます。

💡 ポイント

遺留分を「侵害しない遺言」を設計すること、または遺留分に相当する現金を別途(生命保険など)用意しておくこと。
この2つのアプローチが、相続後のトラブルを減らすうえで有効と考えられます。

あなたはどのケース?「多く残したい」想いの背景

仙台市内の相続相談でよくお聞きするご事情はこちらです。

  • 長男・長女が家業(農業・建設業・個人商店など)を継ぐ予定で、事業資産を集中させたい
  • 介護を担ってくれた子供に、その貢献を報いたい
  • 疎遠な子供には相続させたくない
  • 再婚後の子供と、前の婚姻の子供で扱いをわけたい

こうした事情は、決して珍しいものではありません。

ただ、「気持ちだけで遺言を作る」と、次のような問題が起きやすくなる傾向があります。

  • 他の子供から遺留分侵害額請求を受け、結局お金を支払わなければならないケースがある
  • 遺産分割協議が長引き、事業の継続が難しくなる場合がある
  • 相続後に兄弟間の関係が傷つき、親が望んでいた家族の絆が失われてしまうことがある

だからこそ——「想いを実現しながら、揉めにくい対策」を生前のうちに考えておくことが、ひとつの安心につながるのではないでしょうか。

遺留分って何?仕組みをできるだけわかりやすく解説します

① そもそも「遺留分」とはどんな制度?

📌 セクションのポイント

  • 遺留分=民法が定めた「最低限の相続の取り分」
  • 認められる相続人:子・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)
  • 兄弟姉妹には遺留分が認められていない点にご注意ください

遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の遺言があっても、一定の相続人が最低限受け取れる財産の割合のことです。

平たく言えば、「親の遺言でゼロにされても、法律上受け取れる分」とイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

② 遺留分の割合はどのくらい?(民法第1042条)

📌 セクションのポイント

  • 子・配偶者がいる場合:遺産全体の1/2が遺留分合計
  • 直系尊属のみの場合:遺産全体の1/3
  • 子3人の場合、各自の遺留分は遺産の1/6ずつが目安になります
相続人の構成 遺留分の合計(遺産全体に対する割合)
配偶者のみ 遺産の1/2
子のみ 遺産の1/2
配偶者+子 遺産の1/2
直系尊属のみ 遺産の1/3
配偶者+直系尊属 遺産の1/2

【具体例で確認しましょう】

相続人が子3人(長男・次男・長女)の場合、遺産全体の1/2が遺留分の合計となります。
各人の遺留分は遺産の「1/6」ずつが目安です。

遺産3,000万円のケースでは——各人の遺留分は約500万円となります。
「長男にすべて渡す」という遺言があっても、次男・長女はそれぞれ500万円相当の支払いを請求できる立場にあります。

③ 2019年の法改正で何が変わった?(遺留分侵害額請求権)

📌 セクションのポイント

  • 旧制度:「現物返還請求」→ 土地・建物が分割されるリスクがあった
  • 新制度(2019年7月〜):「金銭の支払い請求」に一本化
  • 事業用不動産の分割リスクは低下した一方、後継者の資金繰りへの影響に注意が必要です

2019年(令和元年)7月1日施行の改正民法により、遺留分を侵害された相続人は「現物返還」ではなく「金銭での支払い請求(遺留分侵害額請求権)」という形が原則となっています。

この改正によって、事業用の土地・建物が強制的に分割されるリスクは以前より下がったと言えるでしょう。

一方で、すぐに現金を用意しにくい後継者が資金繰りに苦労するケースも見受けられます。生前の備えがより大切になってきているのかもしれません。

⚠️ 注意:請求期限があります

  • 行使期限:遺留分侵害を知った時から1年、または相続開始から10年(民法第1048条)
  • 期限が過ぎれば権利は消滅しますが、それまでの間に争いが生じれば家族関係に傷がつくこともあります。
  • 「時間が経てば大丈夫」とは一概には言いにくいため、早めのご準備をおすすめします。

要注意!遺留分についてよくある4つの誤解

📌 セクションのポイント

  • 遺言を作っても、遺留分そのものをなくすことは原則できません
  • 生前贈与は遺留分の計算対象から外れない場合があります(10年以内は加算の可能性あり)
  • 遺留分の事前放棄には家庭裁判所の許可が必要です
  • 公正証書遺言でも、遺留分の問題が解消されるわけではありません

誤解① 遺言を作れば、遺留分は無効にできる?

遺言は財産の配分を指定することができますが、遺留分そのものをなくす効力はないとされています。

「一切の財産を長男に相続させる」という遺言は有効ですが、他の相続人は遺留分侵害額請求ができる立場にあります。遺言と遺留分は、別の問題として考えることが大切です。

誤解② 生前贈与しておけば、遺留分の計算対象外になる?

相続開始前10年以内に相続人へ行われた贈与は、遺留分計算の基礎財産に加算される場合があります(民法第1044条)。

「早めに贈与しておけば安心」とは言いにくいのが実情です。ご注意ください。

※なお2024年の税制改正で、相続財産への加算期間が3年から7年に延長されています。こちらも合わせてご確認をおすすめします。

誤解③ 子供に遺留分を放棄させれば解決する?

相続開始前の遺留分放棄は制度上は可能ですが、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1049条)。

強制・脅迫による放棄は無効となる可能性があり、後から争いになるリスクもあります。あくまで当事者が十分に納得したうえで進めることが前提といえるでしょう。

誤解④ 公正証書遺言なら絶対に争われない?

公正証書遺言は形式面での有効性が高い書類ですが、「内容(遺留分)」の問題とは別に扱われます。

公証人が内容の公平性を保証するわけではないため、公正証書遺言であっても遺留分侵害があれば請求を受ける可能性があります。

仙台の実例で考える!あなたに近い状況はどれ?

ケース① 家業を継ぐ長男に、事業資産を集中させたい

📌 ケースのポイント

  • 不動産が多い場合、遺留分に相当する「現金の手当て」が課題になりやすい傾向があります
  • 生命保険は相続財産に含まれないケースが多く、現金準備の手段として活用されることがあります
状況 仙台市泉区在住・Aさん(65歳)/不動産賃貸業を経営
資産:賃貸マンション2,500万円+預貯金500万円
相続人:長男・次男の2人
希望 賃貸業を継ぐ長男にマンションをすべて渡したい
懸念点 遺産総額3,000万円×1/2=1,500万円が遺留分合計の目安
次男の遺留分は約750万円
→ 長男がマンションを受け取っても、次男から750万円の支払いを求められる可能性がある

✅ 対策の一例(ご参考)

  1. 預貯金500万円は次男に相続させる旨を遺言に明記する
  2. 不足分の250万円は生命保険(受取人:次男)を活用して補う
  3. 遺言と併せて「遺産分割に関する意向書」を作成し、生前に家族で話し合いの場を設ける

ケース② 介護を担った長女に多く残したい

📌 ケースのポイント

  • 介護の貢献(寄与分)は、相続人間の合意がなければ法律上当然には認められません
  • 遺留分を侵害しない遺言設計と、介護の事実を記録に残しておくことが重要と考えられます
状況 仙台市青葉区在住・Bさん(72歳)
相続人:長女・次女の2人/長女が10年間自宅で同居介護
遺産:自宅2,000万円+預貯金1,000万円
懸念点 次女の遺留分は遺産3,000万円×1/4=約750万円
→ 遺留分を侵害する内容の遺言だと、争いに発展するおそれがあります

✅ 対策の一例(ご参考)

  1. 「長女に自宅を、次女に預貯金1,000万円を」とする遺言を作成する
    → 次女の遺留分約750万円を満たしており、侵害しない内容となります
  2. 長女の介護を「療養看護による寄与分」として遺言に記述し、経緯の記録を残しておく
  3. 生前に家族会議を開き、長女の貢献を次女に伝えておく

ケース③ 疎遠な子には相続させたくない場合は?

📌 ケースのポイント

  • 遺言だけで「相続人から除外」することは、原則としてできません
  • 「相続人の廃除」制度は要件が厳格で、裁判所の判断が必要です

法定相続人である子を、遺言のみで「相続人から除外」することは原則としてできません。
「何も渡さない」と遺言に書いても、遺留分の請求を受ける立場は変わりません。

ただし、「相続人の廃除」(民法第892条)という制度があります。
虐待・重大な侮辱などの事情があった場合に限り、家庭裁判所への申し立てによって相続権と遺留分の両方を失わせることができる可能性があります。

ただし、要件は非常に厳格で、裁判所の判断によるため認められないケースも少なくありません。この制度の活用をお考えの場合は、まず専門家にご相談されることをおすすめします。

どの対策が自分に合っている?6つの生前対策を比較する

📌 セクションのポイント

  • 遺言・生命保険・生前贈与・家族信託・相続時精算課税・遺留分の事前放棄の6種類をご紹介します
  • 「どのような方に向いているか」を確認しながらお読みいただくと参考になるかと思います
対策の種類 内容・特徴・向いている方
公正証書遺言 公証役場で公証人が作成します。紛失・偽造のリスクが低く、家庭裁判所の検認も不要です。遺留分対策の基本として、まず検討していただきたい手段といえます。
生命保険の活用 受取人を特定の子に指定した生命保険は「受取人固有の財産」とされるケースが多く、遺留分計算の基礎に含まれにくい点が特徴です。現金準備の手段として有効な場合があります。
生前贈与(暦年課税) 年間110万円以下は贈与税が非課税とされています。ただし相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される点(2024年改正)にご注意ください。長期的な計画が必要です。
相続時精算課税制度 2,500万円までは贈与税が非課税(相続時に精算)です。財産の早期移転に向いている場合がありますが、一度選択すると暦年課税に戻せないため、慎重なご検討をおすすめします。
家族信託 財産管理を信頼できる家族に委ねる仕組みです。認知症対策とセットで活用されるケースも多くあります。遺留分の問題は残りますが、財産管理の安定化に役立つ場合があります。
遺留分の事前放棄 家庭裁判所の許可が必要で、強制することはできません。当事者が十分に納得している場合に限り、有効な選択肢になり得ます。

専門家に相談するとどう変わる?関与のメリット

相続・遺言の手続きは、法律上「ご自身で行うことも可能」です。
ただ実務では、いくつかの落とし穴があるのも事実です。

① 遺留分の計算は、意外と複雑な場合があります

遺留分の基礎財産には、生前贈与(最大10年分)や特別受益が加算される場合があります。また、負債は控除されます。

ご自身で計算されると誤りが生じやすく、後から「計算が違う」と争いの種になることもあります。専門家にご依頼いただくことで、こうしたリスクを減らすことができると思います。

② 遺言書は「内容」と「形式」の両立が大切です

自筆証書遺言は費用を抑えられる一方、形式の不備(日付の記載漏れ・押印忘れなど)で無効になるおそれがあります。

行政書士は遺言書の文案作成をサポートし、公正証書遺言では公証役場との調整もお手伝いすることができます。

③ 家族への「伝え方」の設計も大切な要素のひとつです

遺言書を作ることと同じくらい、生前に家族へ意図を伝えることが大切と考えています。

専門家が第三者として立ち会う「家族会議」を設けることで、感情的な対立が生じにくくなる場合があります。

④ 相続税対策との連携で、より効果的な設計が見込めます

遺留分対策と節税対策は連動している部分があります。生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)や小規模宅地等の特例など、税務上のメリットも考慮した設計が望ましい場合があります。

必要に応じて税理士と連携した総合的なプランニングをご提案することも可能です。

まとめ:今日から始められる3つのステップ

最後に、比較的取り組みやすいアクションを3つご紹介します。

STEP1 遺留分の金額を試算する
まず現状の遺産規模と相続人構成を整理し、遺留分がおおよそいくらになるか把握することから始めてみましょう。「どこに課題があるか」が見えやすくなります。

STEP2 遺留分を満たす遺言を設計する
特定の子への集中相続と、他の相続人の遺留分を両立させる遺言の文案を検討します。公正証書遺言のご利用をおすすめします。

STEP3 資金の手当てを考える
遺留分に相当する現金が不足しそうな場合は、生命保険や生前贈与などで事前に備えておくことが選択肢のひとつになります。

 

記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

法律の決まりごとは時に冷たく感じるかもしれませんが、それは家族がバラバラにならないための「防波堤」のような役割も持っています。

大切なのは、制度を怖がるのではなく、正しく向き合って準備をしておくことです。

私たちも、皆さんの大切な決断を支える裏方として、いつでもこの事務所でお待ちしております。

🙋 仙台で相続・遺言のご相談はお気軽にどうぞ

「揉めないで渡したい」というご家族の想いは、正しい知識と準備によって実現に近づけることができると考えています。

  • 現状の遺産整理から始めたい方
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「何から始めればいいかわからない」という段階でも、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
現状を整理するだけでも、不安が和らぐきっかけになれば幸いです。

※本記事は2025年4月時点の法令に基づいて作成しています。
具体的な判断については、専門家へのご相談をおすすめします。