相続手続きは何から始める? 死亡後に必要な手続きの流れを行政書士が解説

相続手続きは何から始める?
死亡後に必要な手続きの流れを行政書士が解説

ここ数日、仙台は暖かい日が続いていますね。

卸町の事務所に向かう道すがら、季節の移ろいを感じてふと足を止める瞬間がありました。

当事務所には、期限の迫る手続きを前に、焦りや不安を抱えて相談に来られる方が少なくありません。

身近な方が亡くなった後の膨大な手続きを、どう整理していけばよいのか。まずは、今の状況を客観的に眺めるための地図を手に入れることから始めましょう。

【行政書士が解説】相続手続き完全ガイド

仙台・宮城の実績多数|初めての相続でも安心してご相談ください

「親が亡くなったばかりで、何から手をつければいいか分からない」——そんな方のために、この記事では死亡後に必要な相続手続きの全体像と優先順位を、行政書士の立場から分かりやすく解説します。手続きには期限が定められているものもあり、後回しにすると取り返しのつかないトラブルに発展することがあります。ぜひ最後までお読みください。

1.まず結論:相続手続きには「3つのフェーズ」がある

相続手続きを難しく感じる最大の理由は、「やることが多すぎて優先順位が分からない」点にあります。実は、相続手続きは大きく3つのフェーズに整理できます。

相続手続き 3つのフェーズ
【フェーズ1】死亡直後〜数週間:役所・保険・銀行への届出(期限が短いものが多い)
【フェーズ2】3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の判断(最重要期限)
【フェーズ3】10ヶ月以内:遺産分割・名義変更・相続税申告

この3つのフェーズを意識するだけで、「今やるべきこと」と「後でよいこと」が整理できます。以下では、それぞれの具体的な内容を詳しく解説します。

2.なぜ相続手続きは難しく感じるのか

身内を亡くした悲しみの中で、相続の手続きを進めなければならない——多くの方が「何から手をつければいいか分からない」という状態に陥ります。その背景には、次のような理由があります。

  • 手続きの種類が多く、関係機関もバラバラ(役所・銀行・法務局・税務署 など)
  • 期限があるものとないものが混在しており、優先順位が見えにくい
  • 遺産の内容(不動産・預貯金・株式など)によって手続きが異なる
  • 家族関係が複雑な場合、誰が相続人かの確認から始める必要がある

特に「銀行口座の凍結」は多くの方が驚かれるポイントです。金融機関は口座名義人の死亡を知った時点で口座を凍結します。事前に準備しておくことが大切です。

3.死亡後の手続き:優先順位と期限一覧

相続手続きには、法律で期限が定められているものがあります。期限を過ぎると「相続放棄ができなくなる」「税金に延滞税がかかる」といった不利益が生じます。

◆ 期限別 手続き一覧表

期限の目安 手続きの内容
7日以内 死亡診断書の受け取り(医師)・死亡届の提出(市区町村役場)
14日以内 国民健康保険・介護保険の資格喪失届(市区町村)
14日以内 年金受給停止の届出(日本年金機構)※受給者の場合
速やかに 銀行・証券口座の残高確認(凍結前に把握)
速やかに 遺言書の有無の確認(自宅・公証役場・法務局)
3ヶ月以内 相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所)※最重要期限
4ヶ月以内 被相続人の所得税の準確定申告(税務署)
10ヶ月以内 遺産分割協議書の作成・相続税申告(税務署)
1年以内 遺留分侵害額の請求(遺留分がある場合)
3年以内 相続登記(不動産の名義変更)※2024年4月より義務化

【ポイント】特に「3ヶ月以内の相続放棄」は取り返しのつかない期限です。亡くなった方に借金があった場合、この期限を逃すと借金ごと相続することになります。

4.フェーズ1:死亡直後〜数週間にやること

(1)死亡届の提出(7日以内・義務)

死亡届は、医師から受け取った「死亡診断書」とセットで、死亡を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出します。提出先は「故人の本籍地」「死亡地」「届出人の所在地」のいずれかの役所です。

誰が 同居の親族・その他の親族・同居者・家主など(届出義務者の順位あり)
いつ 死亡を知った日から7日以内(国外の場合は3ヶ月以内)
どこに 故人の本籍地・死亡地・届出人の所在地のいずれかの市区町村役場
何を 死亡届(死亡診断書と一体化した用紙)・届出人の印鑑・届出人の本人確認書類

(2)遺言書の有無を確認する

相続手続きのすべての出発点は「遺言書があるかどうか」です。遺言書の内容によって、誰がどの財産を受け取るかが決まります。見落としがないよう、以下の3箇所を必ず確認しましょう。

  • 自宅の金庫・引き出し・貸金庫(自筆証書遺言・公正証書遺言)
  • 公証役場(公正証書遺言の場合。全国どこの公証役場でも検索可能)
  • 法務局(法務局保管制度を利用している場合。2020年7月以降に対応)

重要:自宅で自筆証書遺言が見つかった場合、封印のある自筆証書遺言書は勝手に開封してはいけません。封印のある遺言書は家庭裁判所での「開封」と「検認」手続きが必要です(民法1004条)。ただし法務局保管の遺言書は検認不要です。

(3)銀行口座の凍結への対応

金融機関は、口座名義人の死亡を知った時点で口座を凍結します。凍結後は、遺産分割が完了するまで原則として預金の引き出しができなくなります。

ただし、2019年の法改正により「仮払い制度」が創設されました。相続人は、遺産分割前でも、口座ごとに「残高×1/3×自分の法定相続分」を上限として払い戻しを受けることができます(民法909条の2)。葬儀費用などの支払いにご活用ください。

5.フェーズ2:3ヶ月以内の最重要判断——相続放棄

相続が発生すると、故人の「プラスの財産(預貯金・不動産など)」だけでなく、「マイナスの財産(借金・保証債務など)」も引き継ぐことになります。

借金の方が多い場合、または借金の全体像が不明な場合は、「相続放棄」を検討する必要があります。相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります(民法915条)。

相続の3つの選択肢
① 単純承認:すべての財産(プラス・マイナス)を引き継ぐ(期限内に何もしないと自動的にこれになる)
② 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスを引き継ぐ(相続人全員で申述が必要)
③ 相続放棄:すべての財産を放棄する(3ヶ月以内に家庭裁判所に申述)

【注意】相続放棄をすると、その人は「最初から相続人でなかった」ことになります。そのため、次の順位の親族(兄弟姉妹など)が相続人になる場合があり、その方々にも連絡が必要になるケースがあります。

6.フェーズ3:遺産分割から相続税申告まで

(1)相続人の確定と相続財産の調査

遺産分割を進める前に、まず「誰が相続人か」を戸籍で確定し、「何が遺産か」を調査する必要があります。

  • 相続人の確定:故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得(複数の市区町村にまたがる場合あり)
  • 相続財産の調査:預貯金残高・不動産(登記事項証明書)・有価証券・生命保険・借金(信用情報機関への照会も有効)

(2)遺産分割協議

相続人全員が参加し、誰が何を相続するかを話し合い(協議)で決めます。全員の合意が得られたら「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が実印を押印します。

一人でも欠ければ無効です。また、遺産分割協議書は後の名義変更・相続税申告など、あらゆる手続きの根拠書類となります。内容に曖昧な点があると手続きが止まるため、専門家による作成をお勧めします。

(3)名義変更の手続き

財産の種類 手続き先・内容
不動産 法務局に相続登記(2024年4月より義務化・3年以内)
預貯金 各金融機関に相続届・遺産分割協議書などを提出
有価証券 証券会社で相続手続き(口座開設が必要な場合あり)
自動車 運輸支局・軽自動車検査協会で名義変更
生命保険 保険会社に死亡保険金の請求(受取人固有の権利なので遺産とは別)

(4)相続税の申告(10ヶ月以内)

相続税は、相続財産の総額が「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を超える場合に申告・納付が必要です。申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」で、申告先は故人の住所地を管轄する税務署です。

相続税の計算・申告は複雑なため、税理士への依頼をお勧めします。行政書士は相続税申告自体は行いませんが、申告に必要な戸籍謄本の収集・遺産分割協議書の作成など、前段階のサポートが可能です。

7.注意点・よくある誤解

よくある誤解とトラブル
誤解① 「遺言書があれば揉めない」→ 遺留分を侵害した遺言は争いの原因になる
誤解② 「長男が全部相続するのが当然」→ 法定相続分は平等。遺産分割協議が必要
誤解③ 「相続放棄すれば全部終わり」→ 次の相続順位の親族に相続権が移る
誤解④ 「銀行に連絡しなければ凍結されない」→ 死亡公示などにより金融機関が把握するケースあり
誤解⑤ 「相続税は金持ちだけの話」→ 首都圏・仙台など地価の高い地域では不動産だけで基礎控除を超えるケースも
誤解⑥ 「相続登記は急がなくていい」→ 2024年4月より義務化。3年以内に正当理由なく未申請は10万円以下の過料の対象

8.具体例:仙台市在住・Aさんのケース

【状況】Aさん(60代女性)の夫が急逝。相続人は妻(Aさん)と子ども2人。遺産は仙台市内の自宅(評価額3,200万円)・預貯金500万円・生命保険(Aさんが受取人)800万円。

STEP 1

死亡届提出・遺言書確認(1週間以内)

公証役場に照会したところ公正証書遺言なし。自宅の遺言書もなし。遺産分割協議が必要と判断。

STEP 2

相続人確定・財産調査(1〜2ヶ月)

夫の出生から死亡までの戸籍を収集し相続人を確定。金融機関に残高証明書を取得。生命保険はAさんの固有財産のため遺産に含まれないことを確認。

STEP 3

相続税の確認(2〜3ヶ月)

基礎控除額=3,000万円+600万円×3人=4,800万円。遺産合計3,700万円(不動産3,200万円+預貯金500万円)は基礎控除以下のため申告不要。

STEP 4

遺産分割協議・協議書作成(3〜6ヶ月)

自宅はAさんが相続、預貯金は3人で法定相続分で分割することで合意。行政書士が遺産分割協議書を作成し、全員の実印・印鑑証明書を取得。

STEP 5

名義変更完了(6〜10ヶ月)

不動産は相続登記(提携司法書士に依頼)、預貯金は各銀行で手続き完了。

9.専門家サポートのメリット

相続手続きは「自分でできるもの」ですが、専門家が関与することで次のようなメリットがあります。

行政書士に依頼できること
● 相続人の確定(戸籍謄本の収集・相続関係説明図の作成)
● 相続財産の調査・一覧化
● 遺産分割協議書の作成(各機関が認める正確な書式で)
● 金融機関・役所への各種届出のサポート
● 相続手続き全体のスケジュール管理と書類準備

なお、不動産登記(相続登記)は提携の司法書士、相続税申告は事務所併設の税理士が担当します。行政書士は各専門家と連携しながら、相続手続きのトータルサポートを行います。

仙台・宮城エリアでの相続手続きについては、当事務所へご相談いただくと、行政機関との連携もスムーズです。

10.まとめ:まず「3ヶ月以内の期限」から逆算して動く

相続手続きで最も大切なのは、「優先順位」と「期限」を把握することです。

今すぐ確認すべき3つのこと
① 遺言書の有無を確認する(公証役場・法務局への照会を忘れずに)
② 3ヶ月以内に相続放棄が必要かどうかを判断する(借金の調査を先行)
③ 相続人全員に連絡を取り、遺産分割の話し合いを始める

「何をすべきか分からない」「書類の準備が不安」「家族間での話し合いがうまくいかない」など、どんな小さな疑問でも、専門家への早めの相談が解決の近道です。

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【この記事について】

本記事は、一般的な情報提供を目的として作成しております。個別の案件については法律・税務の専門家にご相談ください。記載内容は執筆時点の法令に基づいており、今後の法改正等により内容が変わる場合があります。

執筆:行政書士・社会保険労務士事務所(仙台市・宮城県対応)