家族信託

「信託」という言葉を見たり聞いたりすると、とても難しそうなイメージで、なんだか取っ付きにくいかんじがするのではないでしょうか?
でも、その仕組み自体はとっても単純で、

自分の財産を、自分の信頼できる人に「信」じて、「託す」 というものです。

もう少し詳しく説明すると、
ある人(委託者)が、自分の財産を、自分で管理や運用をせずに、信頼できる人(受託者)に託して管理や運用をしてもらい、その財産から生じた利益や財産(そのもの)を、特定の人(受益者)に交付するための仕組みです。
具体的には、委託者である賃貸アパートのオーナー(父)が、自分の息子を受託者として管理運用を任せ、その賃貸アパートの賃料収入を、受益者である自分自身(父)が受取る、という事例がシンプルで分かりやすいかもしれません。

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この事例のように、その財産を持っている人の家族が当事者になってする「信託」を一般的に「家族信託」と呼んでいます。
つまり「家族信託」とは、家族を信じて財産を託すことであり、家族による財産管理の新たな手法として注目されています。

◆家族信託の仕組みについて

家族信託には、委託者・受託者・受益者という3人の登場人物がいます。
財産の所有者である「委託者」が、契約や遺言によって、信頼できる人である「受託者」に対して金銭や土地などの財産を委託し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って、ある特定の人である「受益者」のためにその財産(信託財産)の管理・処分などを行う制度です。

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委託者:財産を持っている人

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受託者委託者から財産の移転を受け、受益者のためにその財産の管理や処分を行う人

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委託者:信託により利益を受ける人

信託を理解するにあたっての簡単な事例をご紹介します
賃貸アパートを所有しているAさん(委託者)が、そのアパートの管理をBさん(受託者)にお願いして、アパートから得られる収益をAさんの息子のCさん(受益者)が受け取るというものです。
このように委託者・受託者・受益者がすべて別人なケースは 「他益信託(たえきしんたく)」 といいます。

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委託者

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受託者

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受益者

これに対し、賃貸アパートを所有しているAさん(委託者)が、そのアパートの管理をBさん(受託者)にお願いして、アパートから得られる収益はAさん(Aさんは委託者であり受益者となります)が受け取るという信託も可能で、これを 「自益信託(じえきしんたく)」 といいます。

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委託者

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受託者

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受益者

◆家族信託では所有権が移転します

家族信託では、財産の所有権は受託者に移動します。
不動産を信託した場合には、登記上の名義も受託者に変更になります。
このことが大きな特徴の一つであり、信託を便利にさせる要因の一つです。
例えば、信託財産が不動産の場合、受託者は信託の目的に沿ったものである限り、不動産の賃貸借契約や修繕契約、不動産管理契約など、種々の契約の当事者となることができます。
ただし、ここで注意が必要なのは、信託財産の経済的価値(賃料収入や不動産の売却代金等)はあくまでも受益者のものであるという点です。
委託者と受益者が同一人物となる自益信託の場合には、経済的な価値を受け取る人に変更はありませんので、贈与税は課税されません。

ところが、委託者と受益者が別人となる他益信託の場合には、経済的な価値を受け取る人が委託者から受益者に変更になりますので、信託契約が発効したした時点で、委託者から受益者への不動産価格相当の贈与がなされたものとして(みなし贈与)、『贈与税』が課税されます。

 

◆家族信託はどんな場合に活用できるか

家族信託を活用するといっても、一体どんなケースで利用すると良いのでしょうか。
家族信託は細かく考えると様々なケースに活用できるのですが、ここでは代表的なものをいくつかピックアップしてご紹介します。

1.親の財産を管理する (後見代用信託)

認知症に備えて、高齢の親の財産(預貯金など)を、親に代わって子供が管理する

2.遺言書の代わりとして利用する (遺言代用信託)

自分の死後、財産を引継いだ相続人が死亡した後の相続まで(30年先まで)指定する

3.障がいのある子に財産をのこす(親亡き後のための信託)

障がいを持ったお子さんが相続人となる場合、財産を管理できないので、信頼できる親戚を受託者にして、両親の死後にお子さんが受益者となる信託を組む方法

なお、信託銀行等が取り扱う「遺言信託」ですが、これは遺言執行を前提としたサービスの名称で、遺言書作成のアドバイス・遺言書の保管・遺言執行の業務を行うものです。

◆家族信託の利用を支援します!

家族信託は、家族間で話し合いをして、決まった内容を契約するという、身内で気軽に利用できる仕組みであるといえます。
「残したい」、「引継ぎたい」という計画を立てて、ご自身の考える資産の管理・承継を現実化できるというメリットがあります。

また、生前の財産管理手段として、成年後見制度に代わる選択肢として注目もされています。

成年後見制度は、本人のため・本人を守ることを目的とした制度ですから、預貯金を有価証券にして運用したり、余剰資金を不動産に変えて今より大きい利回りを得るといったことは家庭裁判所が賛成しません。

資産運用や柔軟な相続税対策などの面から考えると、成年後見制度は認知症発症後の資産活用に関しては柔軟性を欠くとも考えられます。家族信託は、こういった認知症・成年後見リスクにも対応しているといえます。

ただし、家族信託を使ったからと言って相続税が安くなるわけでも、争族対策として家族間の揉め事が解決できるわけでもありません。

家族信託の持つメリットとデメリットをよく見極めて、利用したほうがいいのか、生前贈与や遺言書などの別な仕組みを利用して対策をしたほうがいいのか、専門家も交えて考えてみませんか?

まずは信託に関する基本的な仕組みからご相談いただけます。

どうぞお気軽にご連絡ください。

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