どうして「争続」になるんだろう
相続の時に家族や親族間で争いになることを「争続(族)」といいますが、今回は、どうして「争続」になるのかについて、考えてみたいと思います。
なぜ「争族」になってしまうのか?
結論から言いますと、相続問題で家族・親族間で争いになる原因の代表的なものとして、次の2つがあると言われています。
(1)財産を平等に分けられない
(2)亡くなった人に対する貢献とその見返り
それでは、具体的にはそれぞれどういうことなのでしょうか?
「財産を平等に分けられない」
例えば、相続人が「長男」・「長女」・「二男」であって、相続財産が自宅の土地建物(評価額2000万円相当)と銀行預金1000万円の場合。
私の経験上も、このような財産構成の方は案外多いと思います。この場合の各相続人の法定相続分は1000万円ずつとなります。
さて、この事例の場合、相続財産の3分の2が自宅の土地建物ですから、まずこの時点で3人に平等に分割するのは難しいと想像がつきます。
仮に長男が自宅不動産を相続した場合、長女と二男が銀行預金を500万円ずつ相続した上、長男から長女と二男が500万円ずつ代償金を受け取るなどしなければ、平等に相続したことになりません。
しかし、実際には合計1000万円もの代償金を支払うことはできない場合のほうが多いので、結局は、相続分としては不平等の状態になってしまいます。
そしてここで急きょ浮上してくるのが「長男は大学まで行かせてもらってずるい!」であるとか、「長女は嫁に行ったときに結婚資金をかなり持たされたはずだから我慢しろ」などといったような、過去の出来事に対する不満です。
はじめは、財産上の不平等感を「冷静」に考えていたにもかかわらず、いつの間にか感情が先行して「熱く」なってしまい、話合いをすることもできない、といったような状況になってしまいます。
「亡くなった人に対する貢献とその見返り」
超高齢社会の現代において、高齢者介護の問題はどのご家庭でも直面する可能性のある問題です。
誰が介護をしたのか、どのくらいの期間面倒を見たのか。
このとは相続の時にも問題になります。
どんな介護をどの程度、どの位の期間続けたのか、働きながらなのか、そのために仕事を辞めたのか。
自宅での介護だったのか、施設にお世話になっていたのか。
介護に関連する費用を、親本人の財布から払っていたのか、実態は子供が立替えて支払っていたのか、など様々な事情があります。
しかし、これらのことを客観的に評価する指標はないため金銭的価値を算出できませんし、これによって法定相続分が増えることも(いまのところ)ありません。
介護をしてきた本人やその家族は、その苦労や目には見えない立替分(何に支払ったのか証明できないという意味)を正当に評価して、相続にときに考慮してほしいと思っても、実際の遺産分割の場では、このようなことは、あまり考慮されないことのほうが多いようです。
社会的な背景も原因のひとつになっている
争続になる原因の主なものととして「不公平」・「不平等」があるということが分かってきましたが、その背景は何なのでしょうか?
その昔、家督相続の制度があった頃にはこのような問題は起きなかったのかも知れませんが、法律で法定相続分が決められている現代、また、長引く経済的不況の今、少しでもお金が欲しい・貰えると決まっているものはきっちりと貰いたい、というのはもっともな感情ですし、こういったことが背景にあるのではないでしょうか。
このように、どのご家族にも相続トラブルの火種がある現在において、「争続」にならないためにどんなことをすればいいのでしょうか。
このことについては、次回取り上げてみたいと思います。